窒素はどこに消えた?② 水田土壌の場合

窒素って、作物の成長に必要だけど、ちょっとムダに施用しちゃうことってよくあるんですよね。でも、その余った窒素、どこに消えちゃうのか気になりますよね?
前回は、土壌中での窒素の変化を大まかに説明しました。今回は水田の土壌に焦点を当ててみましょう。

窒素はどこに消えた?を3回に分けて説明します。窒素肥料などは作物が十分育つように、作物が吸収するより多く施用されることが多いです。残った窒素などはどうなるのでしょうか。
前回は土壌中の窒素の変化の全体像を説明しました。今回は水田土壌の場合の報告を、いくつか組み合わせて紹介します。説明に数字が出てきますが、数字の正確さとかじゃなく、これくらいの量の窒素が移動しているのだなぁと思ってくれると幸いです。

前回の全体像をもういちどおさらい。
この図では様々に窒素が変化しています。この窒素の変化は、その時々の土壌の状況で、起こりやすさが変わります。
水田の特徴は、水を張って栽培することです。水を張ると、土壌中の酸素は非常に少なくなり嫌気状態・還元状態になります。
このため、畑地土壌とは違った窒素の変化があります。
それでは水田土壌にアンモニア態窒素、硝酸態窒素の肥料を施用してみます。

土壌中での窒素の移動は、作物への吸収、溶脱、脱窒の3つです。
まず作物に吸収される量ですが、施用した時の効率は、50%との報告があります。肥料を多く施用すると、この効率は下がります。

残りの窒素は、どこにいっちゃうのでしょうか。一つ、水に溶けて外に流れてしまう溶脱がありますが、50%との報告があります。土壌に吸着されない硝酸態窒素が溶脱します。

ほかに、細菌により一酸化二窒素、窒素ガスとなり空気中に逃げてしまう脱窒があります。アンモニア態窒素肥料を基肥で施用した場合、30%程度が脱窒する場合があるそうです。
また、一酸化二窒素は温室効果ガスですが、水に溶けやすいので、水田から気体として発生する量は少ないとされています。

足したら100%を超えますが、栽培方法や肥料の種類も様々あり、水稲の場合、灌漑水からの窒素分の流入もあります。厳密な数字はさておき、どれもある程度の量があるのだと思ってください。
施肥効率改善には、水管理や施肥法の工夫があります。

★補足情報★

(参考書籍)
土壌サイエンス入門 第2版、木村眞人 南條正巳、2018、文栄堂出版

(参考文献)
扇状地水田下の土壌水中硝酸態窒素、木方展治、結田康一、日本土壌肥料学会雑誌 第63巻 第5号 p.581-589(1992)
水田地帯における出水(湧水)の硝酸態窒素濃度の周年変化、香西清弘、川田洋子、香川県農業試験場 平成11年度  環境保全型土壌管理対策推進事業
水田からの窒素・リン流出負荷の削減、金木亮一、須戸幹、芝原勉、水分・水資源学会誌Vol.19,No.5,Sep,2006,pp.360-371
解説 農耕地からのメタン・一酸化二窒素の排出はどこまで明らかになったか、八木一行、Jounal of Life Cycle Assessment,Japan,Vol.7 No.1 January2011
水田の水管理及び施肥法の違いによる流出負荷軽減の効果について、東北農政局