ガス化した窒素が生育の障害に?!アンモニアガスの場合

今回の動画では、ハウス栽培での窒素ガスによる生育障害に焦点を当て、特にアンモニアガスの影響を詳しく解説します。施肥の際に生じるアンモニアの発生メカニズムや影響について理解し、換気の重要性が伝わればと思います。土壌のpHや腐植の量もポイントなので、関心があれば分析を検討しましょう。

今日は、「ガス化した窒素が生育の障害?」についてお話しします。以前の動画では、窒素の変化について詳しく紹介しました。そこでは作物への吸収、溶脱、脱窒の3つの移動を中心に取り上げました。

その中で、気体については窒素ガスが逃げる脱窒に焦点を当てましたが、他にも窒素が気体となって逃げることがあるんです。
今回は、ハウス栽培で生育障害を引き起こす窒素の気体の2つのうち、1つを紹介します。

まず、生育障害を引き起こす窒素の種類ですが、アンモニアガスと亜硝酸ガスの2つがあります。今回はアンモニアに焦点を当てて解説していきます。

アンモニアガスによる生育障害はハウス栽培で問題になりやすいですが、実は露地栽培でもアンモニアは揮発しているんですよ。国内では施肥した窒素の約5%が揮発する可能性があると考えられています。

次に、窒素肥料の尿素や硫安を施用した際のアンモニアガスが発生するプロセスについて説明します。

施用した窒素肥料は水に溶け、微生物の活動を受けてアンモニウムイオンに変わります。このアンモニウムイオンは硝化作用で硝酸態窒素に変化し、 作物に吸収されます。
一方で、アンモニアとの平衡状態にもあり、特に土壌のpHが高くなるとアンモニアに変わりやすいんです。また、土壌のpHだけでなく腐植物質が多い場合もアンモニアの発生が増えることが報告されています。

また発生したアンモニアは温度が上がると揮発しやすくなりため、温度は作物に生育障害を引き起こす要因にもなっています。

窒素肥料を施用すると、少なからずアンモニアが発生する、と心に留めておくことが重要です。ハウス栽培で生育障害を回避するためには、土壌のpHを7未満に管理してアンモニアガスの発生を減らし、通風を促進することでアンモニアガスの影響を軽減できるという報告もあります。

今回の動画で土壌のpHや腐植の量に興味を持ったら、簡易分析や専門機関への分析を検討してみてくださいね。次回は亜硝酸ガスについて説明します。

★補足情報★

(参考書籍)
土壌サイエンス入門 第2版、木村眞人 南條正巳、2018、文栄堂出版
エッセンシャル土壌微生物学 作物生産のための基礎 南澤究 妹尾啓史[編著者]青山正和 齋藤明広 齋藤雅典[著者]、2021、講談社
新版土壌肥料用語辞典 編者 藤原俊六郎 安西徹郎 小川吉雄 加藤哲郎、2005、農文協

(参考文献)
アンモニアガスによる発芽障害について、奥田東・高橋英一、日本土壌肥料学会雑誌 第30巻 第5号 p.243-246(1959)
トンネル・ハウス栽培における尿素のアンモニア揮散防止について、佐藤靖臣・阿部泰典・藤井文明、徳島県農業試験場研究報告 No.5 1960 p43-48
アンモニウム溶液よりのアンモニア揮散に伴うアンモニア態窒素のδ¹⁵N値の変化、朴光来・山本洋司・中西康博・熊澤喜久雄、日本土壌肥料学会雑誌 第67巻 第3号 p.314-316(1996)
黒ぼく土からのアンモニア揮散に及ぼす土壌pH・温度・施用窒素形態の影響、笛木信彦・谷昌幸・中津智史、日本土壌肥料学会雑誌 第78巻 第3号 p.309-312(2007)

(参考サイト)
農業環境技術研究所 平成22年度 研究成果情報(第27集)化学肥料の施肥由来のアンモニア発生インベントリー
https://www.naro.affrc.go.jp/archive/niaes/sinfo/result/result27/result27_58.html