窒素はもう少し面白い?!硝化について
今回は、窒素の硝化について深堀りします。窒素は土壌で変化するプロセスについて前回も触れましたが、今回は“硝化”にフォーカスします。硝化とは、アンモニウムイオンが硝酸イオンに変わる反応で、硝化菌によって行われます。水田では湛水状態が硝化の場所が限定され、畑作では全層で硝化が行われます。pHの影響も大きく、硝酸イオン生成はpH6.0が効果的です。窒素吸収効率化のヒントとして、硝化抑制剤や追肥が役立ちます。次回も窒素についてお届けします。お楽しみに!
今回は、窒素の硝化についてです。以前の動画で、土の中の窒素の変化について解説しました。
その中でも、生物の授業や農学部の講義などでもよく出てくる“硝化”について、もう少し解説します。施肥を効率化するヒントにつながれば幸いです。
まず、硝化について説明します。
硝化とは、土壌中のアンモニウムイオンが、亜硝酸イオンになり、さらに硝酸イオンになることを指します。この反応は、基本的に硝化菌と呼ばれる細菌の活動によるものです。そして、この硝化菌は、酸素がある好気条件でおもに活動します。
水田や畑作ではどのように硝化が起きるか、図で説明していきます。
まず水田の場合です。
水田土壌の特徴は、水を張った湛水状態と、中干し・登熟期間での落水状態があることです。今回は湛水状態について説明します。
湛水にすると、水と接している数センチが好気状態になります。この部分でしか硝化は起きません。全層に施用されたアンモニウムイオンは、好気状態の部分でのみ硝酸態窒素になります。なんだか不思議ですね。この現象は実験室内では昔から確認されていますが、実際はほかの要因もあって水田の窒素の動きは複雑です。複雑な理由はまた今度にします。
次に畑作の場合です。
水田と違い、湛水になることがないので、全層で硝化がおきます。この時、硝化する細菌の活動に影響をあたえるのは、温度や三相分布、そして土壌のpHがあります。pHについてもう少し説明します。土壌のpH調整に石灰資材を使用することが多いですが、石灰を施用すると土壌のpHは上がります。
日本の土の場合、pHが上がると細菌の活動は活発になります。硝化もpH4.5よりもpH6.0の方が硝酸イオンの生成量は多くなります。以上が、水田や畑作での硝化の概要になります。
窒素吸収の効率化においては、硝化抑制剤の利用や、こまめな追肥といった工夫などがあげられます。おもな理由は硝化によって硝酸イオンになった窒素を溶脱させないためです。
今回は、授業や講義とは違った面から硝化について解説したつもりですが、いかがでしたか?次回も窒素がテーマの動画の予定です。
★補足情報★
(参考書籍)
土壌サイエンス入門 第2版、木村眞人 南條正巳、2018、文栄堂出版
エッセンシャル土壌微生物学 作物生産のための基礎 南澤究 妹尾啓史[編著者]青山正和 齋藤明広 齋藤雅典[著者]、2021、講談社
(参考文献)
水田状態の土壌中に於けるアンモニア態窒素の消長について、塩入・青峰、日本土壌肥料學會雑誌 第11巻 第4號、1936
土壌の硝酸化成力と窒素質肥料の肥効に関する研究、佐藤吉之助 岡部達雄、千葉県農業試験場研究報告 6号 p.90-96、1965年12月