土壌の電気拡散二重層
土はマイナスを帯びていることが多いです。粘土鉱物の表面が影響してマイナスのもとになっています。強酸的な性格がある負荷電について、その表面の状態について、詳しく説明します。
今回は、電気拡散二重層についてです。電気拡散二重層?あまりなじみのない言葉ですよね、土壌粒子がマイナスに帯びていることを伝えてきましたが、その表面の電荷の影響の範囲のことなんです。作物の養分であるカルシウムやマグネシウムが溶脱するイメージが伝わればと思います。
まず、土の表面のマイナスに関わっている物質について紹介します。
大きく2つで、粘土鉱物、腐植の表面が関わっています。
それぞれの表面に、Oにマイナスがついた水酸基、COOにマイナスがついたカルボキシル基などが、マイナスにかかわっています。この付近にプラスのイオンが集まってきます。
ここのあつまってきている層を、電気拡散二重層といいます。
この二重層を、広ーくみると、次のようになっています。
この二重層はプラスのイオンに影響をあたえますが、土壌粒子の表面から離れるにつれて、その影響力は弱まります。カルシウムイオン、マグネシウムイオンなどのプラスのイオンは、土の表面で最も強く吸着・密集していて、はなれるに従いゆるく吸着している状態になります。
しかも、溶液濃度の違いで電気拡散二重層の様子が変わります。
例えば、カルシウムイオンの場合を考えます。
濃度が濃いとき、土壌粒子の表面に集まります。
濃度がうすいとき、土壌粒子の表面から離れても緩やかに吸着します。
緩やかに吸着しているプラスのイオンは、水などと一緒に流されて溶脱しやすそうですよね。
また、プラスの電荷数でも変わります。
2価のカルシウムイオンと1価のナトリウムイオンを比べます。この場合、1価のナトリウムイオンのほうが緩やかに吸着している量が多くなります。1価のプラスのイオンは移動しやすいといえそうですね。ナトリウムイオンのこの特徴は、土壌劣化やクラスト形成される要因のひとつにもなります。
参考になる部分はありましたか。今回は電気拡散二重層について説明しました。土壌や土づくりが面白いなと思った方は、気軽に高評価・チャンネル登録お願いします。
★補足情報★
ナトリウムイオンとカルシウムイオンの移動については、イオンクロマトグラフィーの陽イオン測定と同じ原理です。
粘土近傍に陽イオンが近づき、とどまることを、「吸着」と表現していますが、厳密には「収着」といわれます。
(参考書籍)
実践土壌学シリーズ4 土壌物理学 西村拓[編]、2019、朝倉書店
土壌サイエンス入門 第2版、木村眞人 南條正巳、2018、文栄堂出版
新版土壌学の基礎 生成・機能・肥沃度・環境 松中照夫[著]、2018、農文協
新版土壌肥料用語辞典 編者 藤原俊六郎 安西徹郎 小川吉雄 加藤哲郎、2005、農文協