苦土とリン酸の相乗作用?!
苦土とリン酸の吸収は相乗作用があると聞いたことはありませんか?一般的に、細胞レベルの取り込みについては苦土とリン酸は相乗的な効果があります。根からの養分吸収においては、どのように考えればよいのか解説します。
今回は、苦土とリン酸の相乗作用についてです。ここでの相乗作用とは、根からの養分吸収において互いの吸収を促進することです。少し古い土の専門書だと、苦土とリン酸の相乗作用の記載があります。でもそんな話、聞いたことない人も多いんじゃないでしょうか?どういったときにおきるのか知っていますか。私なりの解釈で解説します。
まず養分吸収の相乗作用、拮抗作用について説明します。
拮抗作用は、お互いの吸収を妨げてしまう作用のことです。
陽イオン同士であるカリウム、カルシウム、マグネシウムは互いに拮抗作用があることで知られています。
ほかにも多くの養分間で、相乗作用、拮抗作用が見られます。
今回のリンと苦土についてですが、
この関係について比較的詳しく書かれている本があります。
農業技術体系 土壌施肥編 第2巻のマグネシウムの部分です。
詳しくは書いてあるのですが、書かれている内容だけだと、現場で試すにはちょっと情報が足りないかな、という感じです。
この本の内容を支えている論文を紹介します。
水田土壌の報告で説明します。
1950年代の関東地方の水田の試験です。
苦土とリン酸の相乗作用を伺わせる報告があります。
確かに、試験区のデータでは、リン酸肥料・苦土肥料が入った試験区で吸収や生育がよくなっています。
私、この論文を見つけたとき”ちゃんとデータがあるんじゃん”って、喜びました。
でも、苦土とリン酸の相乗作用がおきるには、条件があると考えています。
1950年代は、多くの農地で苦土がかなり不足していたようです。農地の”苦土不足”がポイントだったと考えています。
なので、土壌が「超」苦土不足だったときに、苦土肥料とリン酸肥料を施用すると相乗作用がおきる、と解釈しています。
参考になる部分はありましたか。今回は苦土とリン酸の相乗作用について説明しました。土壌や土づくりが面白いなと思った方は、気軽に高評価・チャンネル登録お願いします。また、今回の内容で、ほかのデータもあるよこんな解釈もあるよ、とご存じの方がいれば、コメント欄でぜひお知らせてください。
★補足情報★
(参考書籍)
農業技術体系 土壌施肥編 第2巻
新版土壌肥料用語辞典 編者 藤原俊六郎 安西徹郎 小川吉雄 加藤哲郎、2005、農文協
(参考文献)
EFFECT OF FUSED MAGNESIUM PHOSPHATE ON PADDY GROWN ON "AKIOCHI" SOIL WITH PARTICULAR REFERENCE TO PHOSPHORUS AND SILICON* , Masao NAKAGAWA, Akira KITAMOTO and Isao TANGE Faculty of Agriculture, The University of Tokyo ,Soil Science and Plant Nutrition, 1:1, 27-28, 1954
網走支庁訓子府町における微量要素(硼素)の欠乏について北海道立農業試験場 化学部
動画では水稲の報告を紹介しましたが、お茶でも同様の報告があります。
茶樹の対する苦土の肥効について(第2報)農林水産省東海近畿農業試験場茶刑部 河合惣吾 石垣幸三 高柳博次,1961