土壌微生物の特徴
土壌微生物(細菌、糸状菌)の特徴について解説しています。作物生産に関わる土壌微生物の、機能的なことを紹介しています。
ひかる泥団子チャンネルです。
今回は、土壌微生物の特徴についてです。土壌微生物は作物の生育を助けたり、ときには病害を起こしたりしますが、土壌微生物といっても様々です。今回は、土壌微生物のうち、細菌と菌類の中で作物生産にかかわる特徴について説明します。
まず、微生物の生物学的な分類を説明します。
現在は、リボソームRNAをもちいた分類方法である、3ドメイン説が利用されています。
それぞれのグループはドメインと呼ばれ、細菌、古細菌、真核生物の3つです。ひとを含め菌類は、真核生物のグループです。生物的な分類をみると、細菌と菌類は、大きく異なっています。
では、細菌と菌類の農地土壌での活動について、どのように違っているでしょうか。
まず細菌についてです。
細菌の特徴は、酸素が少なくても活動できる種類がいるため、水を張った酸素が少ない水田土壌で活躍しています。また、分子量が小さい、構造が単純なものを分解・利用することが得意です。
このため、農地土壌の窒素循環は細菌が担っている部分がおおいです。窒素肥料の施用後、アンモニア態窒素は硝酸態窒素にかわりますが、それぞれ分子量は小さく、ほぼ細菌の活動によるものです。☆また、土壌の窒素分が大気中に逃げてしまう脱窒、根粒菌による窒素固定も細菌によるものです。
一方で菌類は、土壌のpHの影響をあまり受けずに活動できます。pH5.5より低い土壌では細菌の増殖力が下がりますが、菌類はあまり影響を受けないとの報告があります。
また、分子量が大きく、複雑な有機物の分解・利用が得意です。
こういった特徴から、菌類の一部は作物の抵抗を破って、病害を起こします。作物病害の8割は菌類によるものともいわれています。☆また、一部を除き、いろいろな植物との共生が可能なアーバスキュラー菌根菌は菌類に該当し、リン酸吸収を助けています。
参考になる部分はありましたか。今回の動画では、土壌微生物の特徴について説明しました。
土壌や土づくりが面白いなと思った方は、気軽に高評価、チャンネル登録をお願いします。では、また次の動画でお会いしましょう。
★補足情報★
【細菌の特徴】
根粒菌周辺の脱窒では糸状菌も関与しています
【糸状菌の特徴】
レタス根腐れ病は、罹病したレタスの断面をイメージしています
(参考書籍)
三訂版 視覚でとらえるフォトサイエンス生物図録、2016、数研出版
エッセンシャル土壌微生物学作物生産のための基礎 編著者 南澤究・妹尾啓史、2021、講談社サイエンティフィク
土壌サイエンス入門 第2版、木村眞人 南條正巳、2018、文栄堂出版
(参考文献)
土壌中のセルロース分解における糸状菌の役割、早野亘一、1991、土と微生物NO.38,pp.35-44
土壌pH改善でダイズ茎疫病の発生抑制、古河衛、2007、農業および園芸 82巻11号p.1203-1207
農研機構 転炉スラグによる土壌pH矯正を核とした土壌伝染性フザリウム病の被害軽減技術 -研究成果集-