土壌中の陽イオン(K,Ca,Mg)の移動について 

土壌中の養分の移動や、植物の養分獲得方法にについて解説しています。教科書ではあまり記載のない、カルシウムやマグネシウムの獲得方法について説明しています。

【内容】

ひかる泥団子チャンネルです。
今回は、土壌中の陽イオンの移動について説明します。これらの陽イオンは植物の生育には重要で、土の中ではプラスのイオンです。
植物が陽イオンを吸収するためには、水分や根の広がりが大切である、ということを説明します。

今回のポイントは、植物が吸収するための養分の移動は2つある、ということです。
1つ、マスフロー:硝酸態窒素など、植物の水吸収に伴う養分移動
2つ、拡散:カリウム・リン酸といった根の吸収によって生じた養分の濃度の差に従う移動
それぞれ、説明していきます。

マスフローとは、土壌がマイナスを帯びているため、硝酸態窒素など吸着しづらい養分が、土壌溶液と一緒に根の付近まで移動することです。マスフローでは、養分の移動性が高いため、根から離れた養分の吸収も期待できます。マスフローでの移動は水分が大事です。

次に、拡散です。土壌に吸着しやすい養分が根に吸収されると濃度差が生じます。この濃度差に従って養分が移動してくるというものです。拡散は養分の移動性が低いため根を広く張らせることが重要になります
あらためて、養分の移動について考えてみますと、土に吸着しやすそうなプラスのイオンだと、どちらかというと拡散で移動し、植物に吸収されている、といえそうです。

実際の陽イオンの移動なんですが、調べた研究があります☆。結果的にはマスフロー・拡散の両方の移動がある、ということです
その実験を紹介します。ライゾボックスという装置を使います。この装置では、陽イオンを含んでいる土をいくつかの区分に分け、布で仕切ります。植物の根はこの布に囲まれた区分から出られませんが、水分や養分は通り抜けることができます。この実験では、栽培前後で、土に含まれている陽イオンなどを調べることで、マスフロー、拡散、の両方の移動があると説明しています。

参考になる部分はありましたか。今回の動画では、土壌中の陽イオンの移動について説明しました。
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【補足情報】  

(参考書籍)
根の事典 新装版、根の事典編集委員会、2009、朝倉書店
土壌サイエンス入門 第2版、木村眞人 南條正巳、2018、文栄堂出版

(引用論文)
蔡 徳龍・茅野充 1990. 根圏における微量元素肥料の挙動およびそれに及ぼす窒素添加の影響、、土肥誌、61 、614〜621
蔡 徳龍・後藤茂子 ・茅野充 1993. 根圏における微量元素肥料の挙動に関する植物間・品種間差異、土肥誌、64 、34〜41
、矢野勝也 2001.土壌不均一系における水・溶質移動と植物根の相互作用、雑草研究、56(1)総説、19-23

論文内では、今回紹介した養分以外の移動についても調べられています。