アルミニウムは悪者?土壌中アルミニウムの正体とリン酸・生育への影響

今回は、土壌に多く含まれる元素「アルミニウム」について、地学的な視点から土壌中での存在形態、農業生産への影響までを解説します。風化の進行とアルミニウムの濃集、土壌中での分布を整理したうえで、リン酸の固定化や低pH条件で起こるアルミニウム障害を紹介。土壌分析を活用したリン酸施肥やpH管理の考え方が学べる内容です。

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今回は、土壌に多く含まれる元素「アルミニウム」について、地学的な視点から土壌中での存在形態、農業生産への影響までを解説します。風化の進行とアルミニウムの濃集、…

ひかる泥団子チャンネルです

前回は、ケイ素について紹介しました。
今回は、元素周期表でケイ素の隣に位置する
アルミニウムについて紹介します。

土とアルミニウムの基本的な位置づけ

土を管理する上で、
アルミニウムを意識して作業することは、
ほとんどないかと思います。

作物への影響としては、
アルミニウムはリン酸の固定や生育障害など、
あまり良くない面が挙げられがちです。

一方で、アルミニウムは
土に非常に多く含まれている元素でもあります。

今回は、そんなアルミニウムを
土づくりの視点から、少し身近に感じてもらえるように
説明していきます。

地学・地理から見るアルミニウム

まずは身近に感じてもらえるように、
学校の図表などで出てくる内容から
土とアルミニウムの関わりを紹介します。

地学や地理の授業では、アルミニウムは
鉱物資源や岩石の説明の中で
登場することが多いです。

これから紹介する内容は、
農業というよりも鉱工業分野の話になります。

変動帯と安定大陸

地球の大陸は、プレートの動きから
大きく2つに分けられ、
日本のような変動帯安定大陸に分類されます。

変動帯では、プレートの境界にあるため
地殻変動が活発です。

一方、安定大陸は非常に長い期間にわたって
風化と浸食を受け続けています。

今回、注目したいのは
この安定大陸です。

岩石の風化と元素の流出

岩石が風化すると、含まれている元素は
溶けて流れ出していきます。

ただし、すべての元素が
同じように溶けて流れ出すわけではありません。

岩石は小さな鉱物の集まりでできており、
元素は鉱物の表面で陽イオンなどになって
溶け出していきます。

溶け出しやすい元素には順番があり、
カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム
などが挙げられます。

これらの元素は、
鉱物や土から流亡しやすい性質を持っています。

一方で、アルミニウムや三価の鉄は溶けにくく、
鉱物や土の中に留まりやすい元素です。

溶けやすい元素と溶けにくい元素がある、
この点を知ったとき、私はとても新鮮に感じました。

ボーキサイトと農業利用

安定大陸などで風化が極端に進むと、
その土地に留まりやすいアルミニウムが濃集し、
ボーキサイトと呼ばれる鉱石ができます。

農地において、ボーキサイトを含む土壌は、
ほかの陽イオンが減っているため、
一般に養分が乏しく、痩せた土壌になります。

一方で、安定大陸であるオーストラリアでは、
ボーキサイトが産出し、
アルミニウムとして日本などに輸出され、
鉱工業分野で活用されています。

アルミニウムが多い土地は
農業生産には向きませんが、
鉱工業では価値のある資源になります。

土壌中のアルミニウム

では、アルミニウムが
土壌の中でどのように存在しているかを見ていきましょう。

土壌の化学組成を見ると、
ケイ酸の次に多いのが
酸化アルミニウムです。

報告例では、
有機質部分17.35%、ケイ酸51.00%、
酸化アルミニウム17.53%とされています。

つまりアルミニウムは、
どの畑にも普通に、
そこそこの量が存在している元素です。

アルミニウムを含む土壌中の物質

アルミニウムは、

  • 礫や砂などの一次鉱物
  • スメクタイト、カオリナイトなどのケイ酸塩粘土鉱物
  • 火山灰土壌に含まれるアロフェンやイモゴライト
  • 水酸化アルミニウムのギブサイト

といった形で、土壌中に存在しています。

ここからは、
土壌中のアルミニウムが
作物に与える影響を見ていきます。

アルミニウムが重要になる2つの点

リン酸との関係

アルミニウムはリン酸と結びつくことで、
リン酸アルミニウムとなり、
水に溶けにくくなります。

その結果、リン酸は
作物に利用されにくくなることがあります。

この現象を
リン酸の固定化と呼びます。

ただし、どの条件でも
固定化が起こるわけではありません。

アロフェンやイモゴライトに含まれるアルミニウム、
そしてpHが低い環境では、
リン酸の固定化が起こりやすくなります。

最近では、リン酸が固定化されず、
作物に利用可能なリン酸が
多く蓄積している圃場も見られます。

このような圃場では、
リン酸の減肥が可能です。

アルミニウムによる生育障害

アルミニウムは、
すべての作物に必須ではないため、
有用元素に分類されます。

ただし、pHが4.5以下になると、
三価のアルミニウムとして存在し、
作物に強い毒性を示します。

このアルミニウムが根に入り込むと、
根の伸長が阻害され、
生育不良を引き起こします。

特に、非アロフェン質の黒ボク土では
生育障害が起こりやすいとされています。

そのため、土壌pHを
5.0以上に維持することが重要です。

作物ごとの違い

作物によって、
アルミニウムへの耐性は異なります。

お茶のように、
アルミニウムがあることで
生育が良くなる作物もあります。

一方で、オオムギやホウレンソウなど、
中性付近のpHを好む作物は、
アルミニウムに弱い傾向があります。

火山灰土壌で、
pH6.5~7.0程度を好む作物を育てている場合は、
一度、土壌pHを確認してみましょう。

まとめ

いかがでしたか。
アルミニウムを、
少し身近に感じていただけたでしょうか。

アルミニウムは、
多く溶け出すと問題になる元素です。
ただし、すべての農地に
当てはまるわけではありません。

次回はいよいよ最後、
についてお話しします。

それでは、
また次の動画でお会いしましょう。

★補足情報★

(参考書籍)

三訂版 視覚でとらえるフォトサイエンス地学図録,,研出版

土壌サイエンス入門 第2版,木村眞人 南條正巳,文栄堂出版

作物生産学(II)-土壌環境技術編- 編集者,松本聰 三枝正彦,文永堂出版

土と食糧―健康な未来のために (普及版),日本土壌肥料学会【編】,朝倉書店

新植物栄養・肥料学,米山 忠克・長谷川 功・関本 均(編),朝倉書店

最新地理図表GEO(改訂28版),第一学習社