毛管現象~細い隙間ほど水は高く昇る~

今回は「土の保水性シリーズ」第2回として、「毛管現象」を解説します。
なぜ細い隙間ほど水を強く吸い上げるのでしょうか?
表面張力やメニスカス、ジュランの式も使いながら、土の中で水が移動する仕組みをイラスト中心で分かりやすく説明しています。
乾燥地帯の塩害との関係についても紹介します!

【058】毛管現象~細い隙間ほど水は高く昇る~ - YouTube

今回は「土の保水性シリーズ」第2回として、「毛管現象」を解説します。なぜ細い隙間ほど水を強く吸い上げるのでしょうか?表面張力やメニスカス、ジュランの式も使いなが…

ひかる泥団子チャンネルです。

今日も前回に引き続き「土の保水性」についてお話しします

土って、表面は乾いて見えていても、握ると少し湿っていることがありますよね。

その秘密の一つが、「毛管現象」です。

例えば、細いストローを 水につけると、水が少し上に上がりますよね。

実は、土の中でもこれと似たことが起きています。

今回は、この毛管現象を、式も使いながらできるだけ分かりやすく説明していきます。

毛管現象とは、細い管を水に入れたときに、水が管の中を上昇する現象です。

この現象には、前回説明した「表面張力」が関係しています。

ガラスの細い管を水に入れると、水面が少し曲がります。

この曲がった水面を「メニスカス」といいます。

ガラス管の中の水では、水面は中央が少し下がった「凹型」になります。

これは、水がガラスに引き寄せられる力が強いためです。

この曲がった水面では、空気側と水側で圧力差が生まれます。
その結果、水が上へ引っ張られるように移動します。

土も同じなんです。

土粒子のすき間は、とても細い管の集まりのような構造をしています。

そこに水が入ると、表面張力によって水が引き上げられていきます。

では、この現象を式で見てみましょう。

毛管の半径を 、表面張力を 、接触角を とします。

表面張力は気体・液体・個体の境界で働くのですが、今回の場合、毛管の内側の円周に沿って表面張力は働きます。

そのうち、上向きに働く成分は で表せます。

力のつり合いを考えると、

  • 上からの空気の圧
  • 下からの水の圧
  • 表面張力による上向きの力

がバランスしています。

式にすると、次のようになります。

こんな式、見たら泣いちゃいそうですよね。

左辺は、毛管の表面積と空気圧(P₀)の積、右辺の第一項は毛管の表面積と水圧(P)の積、第二項は毛管の円周と上向きの表面張力の積になっています。

この式を整理すると、

となります。左辺は、空気圧と水圧の圧力差になっています。

通常、水とガラスでは接触角 はほぼ0°なので、

として、

このように式を単純化できます。

次に、この圧力差を「水柱の高さ」で考えます。

高さ の水柱があるとき、水圧は

で表せます。

ここでは、

  • :水の密度
  • :重力加速度

です。

つまり、

空気の圧力と、水の圧力の差は

で表せ、先ほど単純化した式から

となります。

これを高さ について整理すると、さらに次のような式にもなります。

これが、毛管上昇の基本式です。

常温・常圧では、

  • 表面張力
  • 水の密度
  • 重力加速度

がほぼ決まっているので、これら3つの数値を代入すると、

というふうに表せます。

この0.15を毛管の半径で割った式は、ジュレンの式と呼ばれます。

この式、高さ と半径 の単位は cm です。

例えば、

  • 半径が0.1 cmなら、水は約1.5 cm上昇
  • 半径が0.01 cmなら、約15 cm上昇

するということが分かります。

つまり、土の隙間が細かいほど、水を高く吸い上げやすいということです。

農業の現場だと、水滴が地面に落ちたときに、水が真横にじわっと広がる様子を見ることがあります。

これも、細かい隙間を通って水が移動している例の一つです。

また、乾燥地域で問題になる「塩害」にも毛管現象が関係しています。

地下水に塩分が含まれていると、毛管現象で水が地表近くまで上昇します。

その後、水だけが蒸発すると、塩分が地表に残ってしまいます。

これが、乾燥地帯で塩類集積が起きる原因の一つです。

参考になる部分はありましたか?

「細い隙間ほど、水を強く吸い上げる」と覚えてもらえればOKです。

このイメージがあると、次回の「マトリックポテンシャル」もきっと理解しやすくなります。土づくりの科学に興味が出てきた方は、ぜひ動画に高評価・チャンネル登録をお願いします!

★補足情報★

【参考サイト】

ウイキペディア(毛細管現象)

【参考書籍】       

土壌物理学 宮崎 毅 (著) 、朝倉書店、2005

新編土壌物理用語事典 土壌物理学会 (編集)、養賢堂、2002

新課程 視覚でとらえる フォトサイエンス 物理図録、数研出版

最新地理図表GEO、第一学習社 改訂28版、2023