土壌中7%の正体、微量要素なのに主役級?

土によくある元素の最終回は、土壌に多く含まれ、作物にとって必須元素でもある「鉄」について解説します。岩石・土壌中での分布や、酸化物・水酸化物などの存在形態を整理したうえで、水稲の秋落ちと関係する遊離酸化鉄の役割を紹介。さらに、微量要素としての鉄の特徴や欠乏・過剰が起こる条件にも触れ、土壌環境と鉄の関係を多角的に考えます。
ひかる泥団子チャンネルです
最終回は鉄についてです
鉄も土壌中に、もともと多く含まれている元素です
一方で、ケイ素やアルミニウムは植物にとって有用元素でしたが
鉄は植物の生育に必要な必須元素です
土の中で鉄は、どのように作物に影響を与えているかを紹介します
まず岩石中の鉄の量から見ていきましょう
酸化鉄換算で、岩石中には0.8-14%程度、鉄は含まれています
これはケイ酸、酸化アルミニウムの次に多い量です
土壌中の鉄の量に置き換えてみても
土壌中の平均的な化学組成を見ると
有機質部分に該当するものが17.35%、ケイ酸が51.00%
酸化アルミニウムが17.53%、酸化鉄が7.30%含まれています
これらの数字は一連の動画で言い続けてきたので
少しはこの順番が、記憶に残ってくれると嬉しいです
基本的には多い方から順に
ケイ素、アルミニウム、鉄の順を覚えてみましょう
留意点は、鉄は風化が進んでも土に残りやすい元素なので
平均よりも多くの酸化鉄が蓄積する場合もあります
特に、熱帯気候の風化がが進んでいる土壌では
土に50%以上も酸化鉄を含むこともあるようです
酸化鉄が多くなっている土は
土の肥沃度は低いのですが
日光や乾燥で土が硬くなっているので
建築用のブロックなどに利用されています
土壌中の鉄がどのような素材に含まれているかというと
鉄は、礫・砂などの一次鉱物、ケイ酸塩粘土鉱物
ヘマタイト・ゲータイト・レピドクロサイト・フェリハイドライトといった
酸化物・和水酸化物鉱物、そして有機物にも含まれています
酸化物・和水酸化物鉱物には色々と種類がありますが
実は、それぞれの鉱物が見られる土壌には傾向があります
温帯地域の畑では、ゲータイトが
水田ではレピドクロサイトが、黒ボク土ではフェリハイドライトがよく見られます
また、ヘマタイトは岡山県で見られる
赤いベンガラ屋根の素材に活かされていたり
ゲータイトやレピドクロサイトとは、よく見られる鉄サビのことです
これらの鉱物、名前は聞いたことなくても
結構、身近な存在だったりします
では、土の中の鉄と作物との関わりについて紹介します
今回は特徴的なものを2つ紹介します
1つ目は、作物生育の環境面について
具体的には、水稲が育つ環境への影響です
土壌中の鉄は先ほど説明したように
様々な土の素材に含まれていますが
農業では物質と結合がゆるい鉄を、遊離酸化鉄とよんで
土壌診断の項目に使われています
この遊離酸化鉄の値ですが
水田の「秋落ち」という現象が起きる
リスクの指標として使われています
秋落ちとは、水稲栽培において
初期生育から生育前半は、生育が良好であったにもかかわらず
生育の後半で凋落し、収量が上がらない現象のことです
この秋落ち現象の要因の1つに
土壌中の遊離酸化鉄が、少ないことがあげられています
遊離酸化鉄が少ないと
土壌中で、硫化水素が発生してしまいやすい雰囲気になり
稲に根腐れを起こすことが知られています
この稲の根腐れが起きないように
遊離酸化鉄の含有量は、一般的に0.8%以上を目安にされています
遊離酸化鉄の含有量は、砂質の水田土壌で少ない傾向にあり
少ない場合には、酸化鉄を20%程度含む資材を
10アールあたり200から300キログラム使用する対策例もあります
土の中の鉄と作物との関わりで、特徴的なものの2つ目は
作物の栄養面についてです
今回ポイントを3つお話しします
1つ目は、鉄は植物に少量だけでいいということです
植物にとって鉄は必須元素ですが
必要量が少ないので
微量要素に分類されています
実は鉄は微量要素の中でも
最も多く植物体に含まれている要素です
多くまれているといっても
例えば葉菜類だと
鉄は、酸化物換算で0.05%しか含まれていません
土壌中に含まれている鉄の量の平均が7.30%だったことを考えると
作物には、鉄はわずかしか必要ではないんですよね
2つ目が、作物の栄養面的には鉄は土壌中に多くあるため
基本的には、作物の鉄の欠乏症は起こりにくいということです
ただし、石灰質土壌や過剰な石灰施用
過剰なリン酸吸収がある場合は
鉄欠乏症が出ることもあります
過剰な石灰の施用や、過剰なリン酸酸の施用には気をつけましょう
最後3つ目が、土壌中に鉄が多く含まれているからといって
過剰症が起きやすいわけでもないんです
土に含まれている鉄は
植物が利用できる 可溶性鉄 と言われるものは
それほど多くありません
ただし、鉄の過剰症が問題になる場合もあります
それは、酸性で強還元状態の水田などです
ただ、こちらは限られた条件なので
過剰に心配する必要はないかなと思っています
最後にすごく個人的な勘なのですが
鉄をもっと活かした作物栽培の技術があるような気がしています
参考になる部分はありましたか?
3回にわたって土に多く含まれる
ケイ素・アルミニウム・鉄を見てきました
どれも「土壌に多い = 何事もなくて安全」ではなく
それぞれいろんな特徴を持っています
いろんな視点で土を見ることで
土壌分析の結果や土づくりの意味が
ぐっと理解しやすくなればと思っています
では、また次の動画でお会いしましょう
★補足情報★
(参考書籍)
三訂版 視覚でとらえるフォトサイエンス地学図録,研出版
熱帯土壌学、久馬 一剛 (編集)、名古屋大学出版会
土壌サイエンス入門 第2版,木村眞人 南條正巳,文栄堂出版
作物生産学(II)-土壌環境技術編- 編集者,松本聰 三枝正彦,文永堂出版
土と食糧―健康な未来のために (普及版),日本土壌肥料学会【編】,朝倉書店
新植物栄養・肥料学,米山 忠克・長谷川 功・関本 均(編),朝倉書店
最新地理図表GEO(改訂28版),第一学習社
土壌環境分析法,土壌環境分析法編集委員会 (編集),博友社
第4章土壌分析結果の評価と改良対策(岡山県)
新ビジュアル食品成分表 増補版: 食品解説つき 「五訂増補日本食品標準成分表」準拠,新しい食生活を考える会 (編集),大修館書店
